嘘つき⑤【-sign-】
愁哉さんはフッと息を抜いてから、
「初めからあまり顔色がよくありませんでした」
淡々と言葉を落とす。
義務的な口調なのに、気遣ってくれる、その言葉が、優しさが痛い。
「申し訳ありませんわ」
声にならない声は、少し震えたかもしれない。
「謝る事ではありません。ゆっくり休んで下さい」
愁哉さんは、布団をかけ直してそう呟く。
距離は、近いのに、
遠い。
遠くて、
一枚の壁で挟まれたかの様に、近付けない。