嘘つき⑤【-sign-】

それなら、






「…愁ちゃん」



私は、席を立とうとする彼の名前を呼ぶ。以前のままに。



そして、『瑠香姉様』を差したあの日とは違う、だけど、同じ疑問文を。



「あの方を愛していますか?」




それは聞くには稚拙で、何にも包まない素直な表現。



いつまでたっても、



感情だけ嘘を纏っても、



言葉が紡ぎ出すものは大人にはなれないわね。




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