嘘つき⑤【-sign-】
眼鏡越しの部長の瞳が冷たくて、体が強張った。
「話がないなら行く」
顔色ひとつ変えないこの人は鈍感なのか、敢えてそうして突き放すのか。
「…ズルいです」
あたしはクッと息を呑む。やっぱり衝動で言葉を吐いてしまうこんなあたしが、冷静でいられるあなたに勝てる筈ない。
「どうして、どうして、向き合わないんですか琴音さんと。」
僅かに震えて声にならなくてもそれは充分伝わる筈で、あたしは壁を作った様な彼の空気に直視出来ず下唇を噛む。
「…いつだって、あなたは嘘つきです」
そう、あたしも。
「誰でもいいなら、抱いて下さい。あなたにはそれが出来るんでしょう?」
感情を押し殺した声はひどく責める様に響く。