恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
数段を残している階段を見つめながら、ぐっと歯を食いしばってから足を進めた。
どうしても、あたしを見ている杏子さんの目が頭から離れなくて。
藍川に誤魔化されたことも気になって。
階段を下りきって中庭に出ようとしたところで、階段脇の壁に寄りかかるようにしている杏子さんに気付いた。
「あ……」
さっきまで中庭にいたハズなのに。
まるで、あたしがこの階段から下りてくるって分かってたみたいで、少しドキドキする。
ヴァンパイアってそういう予知的なモノまでできるのかな……。
杏子さんは寄りかかったままあたしに目を向けると、品定めするように上から下までを視線でなぞる。
そして、眉を潜めてあたしと目を合わせた。
大きな赤黒い瞳に、ドキっとする。