恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
菅谷さん達を通り越した深山くんは、あたしを見据えるとニヤリと笑った。
「番犬の藍川がいないなら、ちょっと付き合ってよ。副会長。
俺、結構タイプなんだよなー。真っ直ぐで真っ白な感じ。
染めてやりたくなるっつーか、汚したくなるっつーか?」
伸ばされた手に、髪を一束掴まれる。
反射的に身体がすくんで一歩後ずさろうとした時―――……。
「―――染めるのも汚すのも、おまえじゃ力不足だ」
風みたいに聞こえてきた、低く甘く鼓膜に張りつく声。
その場にいた全員の時間が止まった。
次の瞬間には、あたしの髪を掴んでいた深山くんとあたしの間に、藍川の姿があった。
あたしに向けているのは背中だけど、でも藍川だって分かる。
後ろ姿を見てるだけなのに、その後ろ姿が藍川以外考えられない。
そんな自分が不思議になるほど、確信していた。