恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
藍川が握るのは、さっきまであたしの髪を掴んでいた深山くんの手首。
それにしても、いつの間に……。
「な、あ、藍川、いつの間にここに来たんだよ……」
深山くんも驚いているみたいで、声を震わせながら藍川に聞く。
藍川の早業に、『力不足』なんて侮辱された事も忘れているみたいだった。
「一緒に帰ってた桃井が、おまえ達を見かけるなり急に走り出すからそれを追ってきたんだ。
呼び止めたのにそれを無視して首を突っ込んで……案の定、巻き込まれてたから放っとくわけにもいかなくて」
チラっと向けられた藍川の視線に、びくっと身体がすくむ。
だけど、藍川の瞳は怒ってるみたいには感じなかった。
「本当に世話が焼ける。……何度助けてもキリがない」
少しだけ細められた瞳。
それはあたしの時間を止めて、心臓さえも止めたみたいだった。
一瞬だったハズなのに、随分長い間見つめ合っているような、そんな気分にさせられて……。