世界を渡る四の天災
「ただいまー。…さて、と。」
 誰も居ない空の家に響く自分の声。靴を脱ぎ揃えて玄関から六歩目。その床の切れ目の上で魔力を放ちながら呪文を唱える。

「password 3511258」

 7桁のパスワードを詠唱する事により、床下の隠し部屋へ繋がる階段が現れる。入ったら魔力防壁を張って準備完了。親父や母さんですら突破不可能な秘密基地の完成だ。ククク…さて、何をしようか…?まぁ先ずやる事は…



「学校の課題だな。それとライトノベル。」

 学校から出た三つの課題プリントを終わらせる。それが終わったらライトノベルを読み進めよう。ライトノベルだが、今主人公が呪われた力に目覚めて帝国魔軍を虐殺している最中なのだ。熱い。幼なじみが殺されて復讐に燃える殺人鬼主人公、熱い。黙々とプリントの答えを埋めながら、俺はこれからの主人公の行動を予想したりして、今後の物語の展開に大きな期待を抱いていた。



 …ちなみにライトノベルとは言わずアニメ、漫画、ゲーム。そう言った創作品の中からはたまに「おぉ!」と思わず声を上げてしまうような技が存在する。
 この世界すらも覆い尽くせるような膨大な魔力量と、圧倒的な才能を持つ俺はその技や術を模倣する事が出来る。

 召喚系統は必要なアイテムや魔法陣なんかの構成が分からないから手を付けていないが、それでも充分だった。

 最近のお気に入りは物質を分子レベルまで分解、崩壊させる技と自分の心象風景を現実に映す術。金属を魔力の反発、誘導作用を用いて音速で撃ち出すレールガン紛いの技等々。間違いなく俺が戦闘に出たらバランスブレイカーになるだろう。天才故に。



 とりあえず課題プリントは一通り終わらせたのでライトノベルに手を付ける。異界召喚物みたいに俺も何処かの異世界に行ってみたい。竜と戦ったり姫様に見初められたり。この世界は嫌いではないが些か不満なのだ。



「あー…召喚されたい…。」



 その言葉がいけなかったのだろうか。ベッドに寝ころんでライトノベルを読んでいた俺は、何時の間にか青白い光に包まれてしまっていた。






 その日、四々綺 明神は…






     “消えた”
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