Flight with u

「さぁ、休みだし・・・買い物でも行ってみる?」
「うん。」

 母さんと買い物なんて久々だ。私は昨日に続いてはしゃいでいた。この年になってなんて笑われるかもしれないけど・・・大好きな母さんと出かけられるのはいくつになってもうれしい。ちゃっかりおねだりも忘れてないけど(笑)
 帰り道、父さんの友人だった高井さんがやっているレストランに行った。2歳で父さんを亡くした私には面影を思い出すこともできないけど・・・その代わりに何かあるといつも高井さんが手を差し伸べてくれた。たぶん・・・私の中では父親=高井さんっていう図式があるのかもしれない。現実問題、この2人は付き合ってるわけで・・・いつ本当の『お父さん』になってもおかしくない状態だったりする。

「いらっしゃいませ。」
母さんの後ろをついてお店の中に入った私は、びっくりして立ち止まった。

・・・・・・浩志くんだ!・・・・・・

浩志くんも小さく「あっ」と言って一瞬フリーズしていた。母さんは、知り合い?と言いたそうな目で見ていた。そのあとすぐに案内されて窓際のテーブルについた。オーダーのあと、細長いタバコに火をつけて母さんが聞いてくる。
「せれん、吉崎くんのこと知ってたの?」
「あ・・・うん。知ってるっていうか、朋の彼氏のトモダチ。1回しか会った事ないけど・・・。」
「そう。彼、すごくいい子だって言っててね。実は高井さんのお気に入り♪」
最後のほうは小声でいたずらっぽく言う母さんに吹き出しそうになった。私は、「ふぅん・・・。」と短く答え、浩志くんに興味なさそうな反応をしつつ内心ドキドキしていた。まさか、こんな場所で会うなんて思いもしなかったからよけいに・・・。私は自分の感情を持て余しながら窓の外を眺めていた。
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