エレファント ロマンス
ようやく本の中のファンタジー世界に没頭しかけたとき、後ろの自販機でガコン、とジュースが落下してくる音がした。
さっきまで象舎の中にいた飼育員が、ミネラルウォーターを片手に、隣りのベンチに座った。
まだ象の小屋の中を清掃しただけなのに、もう疲れ果てたみたいに背中を丸め、うつむいている。
「ねぇ、おじさん。もしかして、象が怖いの?」
いつもなら、絶対に自分から知らない人に声をかけたりしない。
なのに、今日にかぎって話しかけてしまった。
ここのところ、誰かと会話らしい会話をしていなかったせいだろうか。
私は誰でもいいから、人と話をしたかったのかも知れない。
さっきまで象舎の中にいた飼育員が、ミネラルウォーターを片手に、隣りのベンチに座った。
まだ象の小屋の中を清掃しただけなのに、もう疲れ果てたみたいに背中を丸め、うつむいている。
「ねぇ、おじさん。もしかして、象が怖いの?」
いつもなら、絶対に自分から知らない人に声をかけたりしない。
なのに、今日にかぎって話しかけてしまった。
ここのところ、誰かと会話らしい会話をしていなかったせいだろうか。
私は誰でもいいから、人と話をしたかったのかも知れない。