エレファント ロマンス
「お、おじさん?」


相手は驚いたように顔をあげた。


目深にかぶった帽子の下の顔は、遠目で見た時のイメージよりかなり若い。


25歳くらいだろうか。


「あ、ごめんなさい。おじさんじゃなかったかも」


その人は謝る私の顔を、まじまじと見た。


が、すぐにフイッと視線をそらし、
「俺は象が怖いんじゃない。嫌いなだけだ」
と言った。


「象の飼育係りなのに?」


そう指摘すると、その人はチッと舌打ちをして、にらむように私を見た。


「ミツアミ」


私のお下げを揶揄するように呼びつける。


「俺がこの世で1番きらいなのは象。2番目が女子高生だ。わかったら二度と話しかけるな」


「…………」


―――カンジ悪い。


おじさんって呼んだのは悪かったけど、何もそこまで言わなくたって。


私は飼育員に話しかけたことを後悔した。




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