エレファント ロマンス
『鳴沢先生の怒った顔が好き』


誰かがそう言っていた。


でも、今まで一度も先生に叱られたことのない私は、泣きたい気分だった。


「座りなさい」


談話室の四人掛けのテーブルで、担任と向かい合う。


テーブルの真ん中に蝶々のパッケージが置かれた。


それを見て、自分の頬がカッと上気するのを感じた。


「これ、誰かにもらったの?」


優しいたずね方だった。


「違います」


「じゃあ、君のものなの?」


今度は正面から見据えるようにして聞かれた。


「は、はい……」


「こういうもの、いつも持ち歩いてるわけ?」


「い、いいえ……」


弁解できなくて、沈黙が続いた。




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