エレファント ロマンス
「じゃあ、今日は98ページから」
担任である鳴沢(なるさわ)先生の授業が始まった。
先生はこの女子高で1番人気のある教師。
背が高く、整った顔立ちをしている。
それだけでなく、この名門女子高の創始者の孫であり、現理事長の息子であることも、この教師にプレミアをつけているような気がする。
「前園(まえぞの)。読んで」
真っ先に指名され、私は急いで立ち上がった。
「Despite the continuing avalanche of criticism about……」
しばらくして、リーディングをしている私の横に、鳴沢先生がじっと立っていることに気づいた。
その視線が、私の机の上に注がれている。
―――しまった!
蝶々のパッケージが丸見えになっていた。
私がそこに教科書を重ねるより一瞬早く、先生の手がそれをつかんだ。
「あ、あの……」
言い訳をする前に鳴沢先生がパッケージの中を見る。
無表情に
「これ、君の?」
と聞いてくる。
答えに詰まった。
明奈が私を振り返るようにして、見つめている。
明奈はこのお嬢様学校ではかなり目立つ存在。
今度、何か問題を起こしたら退学になると言っていた。
私は仕方なく、
「はい……。私のです……」
と答えた。
今まで指導を受けたことのない私なら、これぐらいで退学になることはないだろう。
明奈が手を合わせて拝む仕種をしていた。
仕方ない……。
「これは預かる。放課後、談話室へ来なさい」
中味が何であるか、みんなの憶測が始まり、教室の中がざわめき始める。
「静かにしなさい。授業を続ける」
鳴沢先生の一言でみんなの私語がピタリと止んだ。
担任である鳴沢(なるさわ)先生の授業が始まった。
先生はこの女子高で1番人気のある教師。
背が高く、整った顔立ちをしている。
それだけでなく、この名門女子高の創始者の孫であり、現理事長の息子であることも、この教師にプレミアをつけているような気がする。
「前園(まえぞの)。読んで」
真っ先に指名され、私は急いで立ち上がった。
「Despite the continuing avalanche of criticism about……」
しばらくして、リーディングをしている私の横に、鳴沢先生がじっと立っていることに気づいた。
その視線が、私の机の上に注がれている。
―――しまった!
蝶々のパッケージが丸見えになっていた。
私がそこに教科書を重ねるより一瞬早く、先生の手がそれをつかんだ。
「あ、あの……」
言い訳をする前に鳴沢先生がパッケージの中を見る。
無表情に
「これ、君の?」
と聞いてくる。
答えに詰まった。
明奈が私を振り返るようにして、見つめている。
明奈はこのお嬢様学校ではかなり目立つ存在。
今度、何か問題を起こしたら退学になると言っていた。
私は仕方なく、
「はい……。私のです……」
と答えた。
今まで指導を受けたことのない私なら、これぐらいで退学になることはないだろう。
明奈が手を合わせて拝む仕種をしていた。
仕方ない……。
「これは預かる。放課後、談話室へ来なさい」
中味が何であるか、みんなの憶測が始まり、教室の中がざわめき始める。
「静かにしなさい。授業を続ける」
鳴沢先生の一言でみんなの私語がピタリと止んだ。