携帯小説的恋
「あ、はい、申し遅れました。

あたし白石桃花、十六歳。

青陵女子高等学校一年、陸上部。

得意な種目は走り高跳びです!」

桃花ちゃんは勢い良く立ち上がると、まるで諳んじていたように喋り出した。

「丁寧な自己紹介ありがとう、桃花ちゃん。

で、桃花ちゃん、あなたはうちの玲と一緒に前楽園なんてどう?

それとも、あんな不肖の弟じゃご迷惑かな?」

「あ、い、いえ、とんでもないです。むしろ、光栄です」

桃花ちゃんが、綺麗な巻き毛を揺らして、最敬礼した。

「じゃ、決まりね。

チケットは追々、入手次第お渡しします。

で、私はチケットと引き換えに、あなた方の遊園地レポートをいただく、ってことでいいかしら?」

「「は、はい! なんだか、今からワクワクします!」」

きっと、あたし達は、遊園地のチケットを貰うという幸運よりも、レポートを社内報に載せてもらえるという光栄にワクワクしていたんだと思う。

只一人、桃花ちゃんを除いては……
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