みつあみ少女にティアラを乗せて ж2部
あおいは腹を決めて、ノックした。もちろん、マナーというものがあるのだ。
……返事がない。
あおいはもう一度ノックした。
……静かだ。
ほんとにこの部屋なの?――と振り返っても、もう周りに誰もいない。
声を掛けようかと一瞬考えたがためらった。すると、内側から扉が少し開いた。
扉の向こうにいたのは藤咲さんだった。
「…おい様…」
藤咲さんは、驚いた顔をして呟いた。
「藤咲さん!」
あおいは安心して声を上げた。
「遅かったから来ちゃいました…」
藤咲さんは息でふふと困ったように笑った。
「あおい様、夜道をひとりで来られたのですか?」
「…うん。でも、大丈夫!」
あおいは元気に言った。
「帰ろう、藤咲さ――」
言いかけたとき、扉が内側から全開に開かれた。藤咲さんが開けたんじゃない――。
「…どうして?」
依鶴が言った。
あおいを見て、呟いた。長いまつげの子猫のような瞳が、きつくあおいを睨みつけた。
あおいの高揚していた気持ちは、その瞳に氷結した。