みつあみ少女にティアラを乗せて ж2部

あおいは腹を決めて、ノックした。もちろん、マナーというものがあるのだ。


……返事がない。


あおいはもう一度ノックした。


……静かだ。


ほんとにこの部屋なの?――と振り返っても、もう周りに誰もいない。

声を掛けようかと一瞬考えたがためらった。すると、内側から扉が少し開いた。


扉の向こうにいたのは藤咲さんだった。

「…おい様…」

藤咲さんは、驚いた顔をして呟いた。

「藤咲さん!」
あおいは安心して声を上げた。
「遅かったから来ちゃいました…」

藤咲さんは息でふふと困ったように笑った。
「あおい様、夜道をひとりで来られたのですか?」

「…うん。でも、大丈夫!」
あおいは元気に言った。
「帰ろう、藤咲さ――」


言いかけたとき、扉が内側から全開に開かれた。藤咲さんが開けたんじゃない――。

「…どうして?」

依鶴が言った。
あおいを見て、呟いた。長いまつげの子猫のような瞳が、きつくあおいを睨みつけた。

あおいの高揚していた気持ちは、その瞳に氷結した。
< 50 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop