愛し君へ…


「あたしはもう、竜の事なんか好きじゃないの…っ…



…だから別れて…
もう二度と…会いにも来ないで…!」




そのまま響は、
俺に背を向けて走りだした。




「待てよっ…響!!響っ…!!」




一瞬で、響は俺の前から走り去った。


花びらと共に落ちた、一筋の涙だけを残して。




俺はそのまま、呆然とその場に立ち尽くしていた。
何が起きたのか…理解が、出来なかった。


いや…信じたくなかっただけかもしれない。




“あたしはもう、

竜の事なんか好きじゃないの…っ…”




ああ…そっか。
なんだ…そういう事か。




「俺…響からフラれたんだ…」




そうつぶやいた瞬間。
空の色が、急に暗くなった気がした。

俺は重い足取りで、側にあったベンチに腰かけた。


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