人工的な空の下で
結局、営業時間も調べないまま仕事へ行く用意をし出す。

長田に住むユウの家から私の働く梅田までは電車で1時間ぐらい。
電車に揺られながら【ときいさむ】の事を考えていた。

私と付き合ったここ二年で彼は二冊の本を出しているはずだ。

一冊は子供が主人公でありふれた汚い大人だらけの環境で育ちながら、一人の少女に恋をするが幼いながらも汚い考えに染まっている少女を好きな気持ちと軽蔑の気持ちで葛藤する話。

もう一冊は自殺願望のある学生が生きていても無駄だと思いながらも、寄ってくる女はとりあえず拒まないという愛の無い恋愛を重ねながら結局おじいちゃんまで生きるという話。


どちらの小説の女性も私のようなタイプは出てきていないし、出てきていたとしてもあまり気分が良くなる役回りでは無い。


まぁ【ときいさむ】はもう一人のユウではあるが私が付き合っているユウではない。
そう言い聞かせて今までの考えを打ち消した。
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