幕末〓冷血の鬼
「勇さんはね、私と結婚する前に美人ばかりの6人と見合いをしたんですって。」


「そうなんですか!?」


「ええ、でも勇さんは誰も自分の妻にしようとはしなかったのよ。そしてあの人は、あまり器量の良くない私を選んだの。それでね、『私より素敵な人がいるのに何故?』て聞いたらね、どう答えたと思う?」


わからず首を傾げるとおつねさんは、空を見上げて笑った。



「あの人ね『醜女は貞淑。貞淑な女性を妻にしたい。』ってね。最初は、私の事を馬鹿にしてると思ってたけど、勇さんは私の性格を好きだと言ってくれたの。私は、それだけで十分だった。」


おつねさんは、そう言うと私を抱きしめてきた。


もし、私のお母さんが生きていたら、こんなふうに抱きしめてくれたかもしれない。

おつねさんの腕の中は、柔らかくて温かくてとても落ち着いた。


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