【番外編】ご主人様は†ヴァンパイア†

「茜！　逃げろ！」


叫ぶと同時に、目の前のヤンキーの左頬を殴った。バキッという音がして、ヤンキーは地面に倒れた。


「…ってんめぇ……」


不意打ちを食らったヤンキーは殴られた頬を赤く染め、俺を睨んだ。


よっしゃ！　と思うと同時に殴った拳がヒリヒリと傷んだ。痛み分けなんじゃないかと思うくらい、拳は悲鳴を上げていた。



横で見ていたヤンキーのうち一人が俺の腹に蹴りを入れると、湿った砂地の上に押し付けた。


地面に倒れ込んでしまった俺は、サンドバックのように蹴られ続けた。



チキショー、これじゃリンチじゃねぇか。喧嘩ってのは一対一でやるもんじゃないのか？



薄れゆく意識の中、理不尽な攻撃に、理不尽な世の中を重ね合わせていた。



「怜央ちゃんっ！！」


意識を手離そうとした時、茜の声でハッと我に返った。