君のそばに
「嘉賀くんっ……これは…!」
私はまるで言い訳をするように急いで実春との間に距離を取る。
…もしかして、今までの全部…見てたのかな……。
実春に告白されて、抱きしめられた時ぐらいから聞こえてきたあの音が、清水さんの咳だということは分かった…。
清水さん、風邪ひいてたもんね…。
…ということは、その前後くらいには、私たちを見ていたってことになるよね。
清水さんだけならまだしも、…嘉賀くんにまで、見られていたなんて……。
……何で、私、こんなに焦ってるんだろう……。
すると、まるで私の心境など知らぬとでも言うように、実春が口を開いた。
「…悪いな、千春。オレ、沙矢が好きなんだ。」
実春はそう言って、私の方に歩み寄り私を引き寄せた。
…その目は嘉賀くんに対抗するように、しっかりとした眼差しで嘉賀くんを捉えていた。
…微かだけど、私を抱きしめる腕が震えていた。