王様と料理人
普段のヘラヘラした様子からは想像も出来ないほど、紳士的な男がそこに居た。

「俺は確かにトーコが好きだ。だからと言って、トーコが望まないのに無理にこの世界に留めて自分のモノにする気はない。」

真っすぐな視線に、胸の奥がざわめく。

「ただ、今すぐに帰る事が出来ない以上、少しは俺に、この世界に心を開いてほしい。…それだけで、俺も少しは報われる。」

「方法さえ見つかれば必ず帰すから…せめてそれまでは俺の舌と、ほんの少し心を満たしてくれないか?」

切なげに目を細めて真摯な願いをぶつけられ、否とは言えなかった。

「わかり、ました。…でも、あの噂は、困ります…私は王妃になんてなりません…。」

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