黒猫-私は女王-
配置に着く時に天宮が消えた事。
部屋に入った時には既に壕越匡哉は死んでいた事。
心臓が抉り取られていた事。
その心臓を握り締める黒猫を見た事。
窓からヘリで逃亡した事。
そして部下は複数に居る可能性があると言う事を、詳しく話した。

「そうか、、、。黒猫の顔が判らなかったのは残念だったな。でも伊井田が無事で何よりだ」

そう。
伊井田は嘘を吐いている。
天宮が黒猫だと確信はある。
だが、証拠が無い。
確かに伊井田は顔を見たが、それだけでは証拠が不十分なのだ。
伊井田が見たと言っても、第三者の証言が無い限り、天宮を逮捕するのは不可能に近いだろう。
伊井田は天宮が黒猫だと言う事を裏付ける証拠を見つけるまで、誰にも言わない事にしたのだ。

「課長ぉー」

長い廊下の向こうから誰かが叫びながら走ってくる。
人影の顔がはっきりと見えた時、伊井田は全身の筋肉が凍るのを感じた。
廊下の向こうからやって来たのは、天宮亜理紗だった。

伊井田は又しても幻かと思った。
そして先程、壕越匡哉の部屋での光景がフラッシュバックして、あの時と同じ様に強烈な吐き気に襲われた。

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