─ Alice ?─



玩 具 ?


私にはどうしても理解できない。


「ねえ…その玩具って何なの?」


人のことを玩具だなんて、可笑しい。


「アリスにはきっと理解できぬことだ。」


目線を逸らし、呟く。
何か、隠している。


「ハートエース。

私、隠し事されることが
一番嫌いなのよ。」


わざと【一番】と強調する。



「!!き、嫌い!?
アリスは私のことが嫌いなのか!?」


いや、そうじゃないんだけど。

話が進まない。
ハートエースに聞こうとしたこと自体
間違いだったのかも。


「はあ…もういいわ。

私、スペードさんの所へ
行かなくちゃいけないの。
じゃあまた。
助けてくれてありがとう。」


軽く挨拶をして立ち去る。
嗚呼、時間が勿体無い。


後悔にうなだれながらも
愛想だけは良くしておこうと
ふと後ろを振り向くと、


ハートエースはすでにいなかった。

代わりに綺麗な白い薔薇が
一輪置いてあるだけ。


そんなにショックだったのかな…
ちょっと可哀想。

それにしても薔薇を置いていくなんて
ちょっぴり素敵。


だけど時間がない。
急いで湖を探さなくちゃ。


がむしゃらに走り出す。
道なんて知らない。



ただ、衝動に任せて走り出す。


だから気づかなかったの。




後ろから迫る恐怖に。




白い薔薇が
ハートエースのものじゃないことに。



気づけなかったの。
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