─ Alice ?─
白兎さんと黒兎さんは仲が悪かった。
黒兎さんに聞くと、
だから二人になっちゃったんだよ、と言っていた。
幼いありすには理解できなかった。でも、今ならわかる。
以前、シロウサギさんが言っていたことと一緒。
意見の違う二人の自分が
それぞれ別個体になる。
白兎とシロウサギさんのように。
「ねえ、白兎さんは?死んじゃったの?」
『違うよ。元の体に戻ったんだ。』
元の体。黒兎さんのことだろう。
「元の体?」
『アリスでいえば、母親のお腹の中ですね。』
体が消滅しても、白兎さんは黒兎さんがいる限り死ぬことはない。
「ねえ、二人はどこからやってきたの?」
『私たちは白兎です。といえば分かっていただけますか?』
「んー…」
今ならわかる。
黒兎さんのもう一つの意志が白兎さん。
白兎さんの元の意志が白兎。
そしてもう一つの意志がシロウサギさん。
つまり、白兎もシロウサギさんも元は黒兎さん、ということになる。
これですべてが繋がる。
ふと、白兎さんの首を見ると
此方を見て、ニヤリと笑った。
『正解です。アリス。
ですが…それで全て、ですか?』
!!!!????
「なっ…あっ…」
意識が遠くなる。
記憶はここまでしか見せてもらえないのだろう。
「まだ…まだ知りたいのに…」
─さあ、アリス。お戻りなさい。─
私の意識はそこで途絶えた。