─ Alice ?─



立ち尽くす私を置いて、黒兎さんは颯爽と走り去って行く。



「苦しめばいいよ。ありす。僕を裏切った罰だよ。


君に居場所を与えたのも、名前を与えたのも僕なんだ。


そんな僕を君は裏切ったのだから、苦しむのは当たり前だろう?」



遠く、離れているのに、声だけははっきりと耳に届く。




時計が動き出さない限り、私は必要とされぬ存在──…




「せっかく、アリスになれたのに…」


その言葉に空気が一瞬、止まった気がした。




「君が、アリスだって?何言っているんだよ。君はチェシャ猫を選んだ。その時から君はアリスじゃなくて ただのありすだ。」




どういうこと…?


理解が出来なかった。



「チェシャ猫の力は【導き】── キングから説明は受けている筈だけど…もう、忘れたの?」










   ア リ ス 。

この世界には特別な力を

持った者たちがいるんだ




【誘惑】の帽子屋


【空間】の───


【導き】のチェシャ猫




  元の世界へ
  戻りたいなら、



  チェシャ猫を選べ。



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