─ Alice ?─
突如聞こえた男性の声。思わず後ろを振り返れば、
「あ…えっ…。」
思わず、呆然としてしまうくらい、黒い人。
黒の シルクハット。
黒の スーツ。
風に靡く 漆黒の髪。
「そんなに怒らなくても別になんもしねえよ。」
黒い人は、あくまで私を無視して黒猫と話をする。
フシャーア!!
「あ?お嬢さんと2人の時間を返せって?あー
悪かった悪かった。俺も時間がないんだ。仕方がねえんだよ。」
何故か会話の成り立っている謎の黒い人。誰、とか何で、とか…そんなことはどうでも良かった。
「あ、あの……。」
「ん?ああ、待たせたな アリス。よし、行くか。」
ぐいっと腕を引っ張られ
「行くかって…え?そ、それに…あなた、誰?」
「あとで教えてやるよ。」
ぐいぐい引っ張る黒い人に、不信感はどんどん募っていく
なんとなく振りほどけないまま、辿り着いたのはよく知る広場。
「〜~は、離して下さいっ。」
パシッ
「…なに怒ってんの?」
不思議そうに首を傾げる黒い人に募った不信感は、次第に苛立ちへと変わっていく。
「怒るに決まっているじゃない!!いきなり知らない人に連れ回されて……あなた何なのよ!?」
感情任せに、思わず叫ぶが、不安なのか苛立ちなのか、涙で視界が歪みだす。
「うっ……ぅぅ。」
「えっ!?ちょ……っ?」
けれど、おあいにく様。
「さいならっ!!!」
そんなに簡単に泣くような女の子じゃ無いの。
動揺している隙に、全力疾走。
「あっ…待て!!そっちは…―― 。」
「ふんっ…その手にはのらな……――っ。」
私の目の前には、巨大な穴。
全力疾走中の人が、急に止まれますか?
「 うそぉおぉぉ!!!???」
「……だから言ったのにな。」