奇蹟のはじまり
「だけど、それは…」

奥様は小さく首を振りま

した。

『罰が当たったのよ』

「罰…?」

『あの子を実の母親や兄

から取り上げた罰。神様

も酷なことをなさるのね

。あの子ではなく私に直

接天罰を下せばいいのに



「奥様…」

『代われるものなら代わ

りたい。それに、和也が

こんなことになってしま

って、私は智さんが満州

から帰って来ても顔向け

出来ない』

奥様は何度目かの深い息

をつきました。

その息には深い嘆きや悲

しみ、切実な祈りが含ま

れているような気がしま

した。
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