偽りの仲、過去への決別
松山は気持ちが、すっきりしたみたいだ。 「それにしても俺をふるなんてあの女。」 松山は言った。 「でも、明日から学校行きづらいなあー。」 松山はため息をついた。「大丈夫だよ。それにクラス違うし。」「だよね。別に恥ずかしいことした訳じゃないんだから。」完璧に松山は開き直っていた。 「でも、秒殺だったね。」 カズが、大笑いすると、立ち上がり走ってにげた。「てめえ、カズ」 松山も、笑いながら、カバ顔で追いかけてきた。 山の公園は、陽が暮れても、笑い声が聞こえていた。 次の日、松山がふられたことが、学校中に知れ渡っていた。 カズも好きな女の子がいた。その女の子は、松山と違い同じクラスメイトだった。 最初の頃は、転校してすぐ、言語障害でクラスの笑いものになっていた。しかし最近はなくなっていた。 カズの言語障害も、時間とともに良くなっていった。 心配した祖父が、大学病院に知り合いの紹介でカズを連れていったからだ。 カズの家によく祖父が来た。心配でしょうがないからだ。 相変わらず、父親は夜遅く帰宅して、朝早く出掛けるので、カズや兄と顔を合わせることはなかった。 母親は実家に帰ったまま音信不通だった。 父親はいつも、テーブルの上に、兄とカズの生活費用を置いていった。 祖父もなにかとお金や、祖母が作ってくれた料理を持ってきた。だから、生活には、不自由することはなかった。 祖父はカズが上手く喋れないことを、すごく気にしていた。だから親代わりのつもりでカズの言語障害を直そうと思っていた。 カズは、電車に乗って大学病院に行くのが楽しみだった。 大好きな電車に1時間も乗れることが、単純に嬉しかった。それと、堂々と学校を休めるのがよかった。 「相当、重症です。リハビリが必要です。」 医者は、これまでカズを病院に連れて来なかったことを、祖父に対して、きつい言葉で責めていた。