偽りの仲、過去への決別
カズと松山は笑った。笑うしかなかった。 「カズ。結衣ちゃんのこと呼び捨てするなよ。」 2人は、山に向かって走り出した。 カズは、クラスの中にすっかり溶け込んでいた。最初のうちは、不愉快な学校も、嫌いではなくなっていた。 カズのことを、クラスのみんなが笑っていると思った。でも、冷静になって、よく観察すると、笑っていないクラスメイトもいた。 松山しか笑っていないと思っていた。「カズのこと、みんなが笑っているわけではないよ。」 松山の言葉で、カズは、自分に欠けていた冷静さを取り戻した。 確かに、松山を始め、結衣も、洋二も、それ以外にも何人かは、笑っていなかった。 松山や、結衣や、他の生徒も、明らかに不愉快な顔を浮かべていたのが見てわかった。 カズは、自分の被害妄想を反省した。 担任教師の、集中的に馬鹿にしたカズに対する態度が、なくなっていた。 松山が、たぶん、お父さんである松山先生に抗議したのだろう。松山は、カズには、何も言わなかったが。 担任教師は、カズに優しくなった。でも、カズにとって、今になってはどうでもよかった。 松山先生は、カズが、苦しんでいるのを知っていた。だからこそ、いつでもどこでも、何も言わず、ただ見つめていた。 学校の先生と、息子の親友として。 第4章 普通 カズと松山は、いつまでも、この場所で、友情が続くと、思っていた。 カズは、松山と、新たに友達になったヒロと遊んでいた。 ヒロは、隣りのクラスで、松山が恭子ちゃんを観察に、行っていた時に、知り合いになった。 カズと、松山が帰り道に歩いていると、後ろから付いてきた。 松山は、恭子ちゃんに、ふられてからヒロと会うことはなかった。 松山は、恭子にふられたことが、学校で噂になり、頭にきていた。みんなに冷やかされ、恭子の噂を聞くだけでうんざりしていた。