偽りの仲、過去への決別
仲がいいほど、お互いに妥協できずにいた。お互いが、よく知る仲だから意地を張っていた。 結衣は、カズにいつも話しかけてきた。自分の家の定食屋の話し。好きなアイドルや、行ってみたい国など、たくさんの話題を持ってカズに接してきた。 カズも自分のことを隠さずに話した。家のこと、家族のこと。 結衣は、明らかに戸惑いを隠さずにいた。動揺する気持ちを、持ち前の笑顔で隠すのが精一杯だった。 カズは、もうカズの真実を知った結衣が、気持ち悪がって喋ってくれないかもしれないことに、不安を感じていた。 カズは後悔していた。好きな結衣に自分のことを話したことを。 でも次の日、結衣はいつも通りに、「おはよー、元気。」 と言ってくれた。 結衣がひょっとして、カズのことが、好きなのか、クラスのみんなが噂をしていた。 2人が話していると、いつの間にか結衣の女友達の幸子や、淳子が様子を伺いにきていた。 それだけ、2人の仲の良さが、クラスの関心事になっていた。 プライドの高い洋二は、ショックを受けていた。2人の話しを聞く為に、なにかと、カズに話しかけてきた。 カズは、洋二の目的が、結衣であることがわかっていた。 カズは、結衣が洋二のことが好きだと思っていた。普通に考えれば、カズは恋の駆け引きに使われていると思いこんでいた。 洋二を前にして、カズは、すべてにおいて落ち込んだ。 かなうはずのない相手が、わざわざ向こうから、やってきたのだ。 小さな船で、荒波に立ち向かうと転覆してしまう。相手は、軍艦なみの大きさで、荒波もスイスイと航行してしまう。 小さな船で、荒波に立ち向かうと転覆してしまう。相手は、軍艦なみの大きさで、荒波もスイスイと航行してしまう。 小さな船は、荒波が静まるまで、どこかの島影に隠れるしかない。 でも隠れてばかりではいけない。いつかは、荒波に立ち向かう勇気が必要になる。
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