偽りの仲、過去への決別
カズは結衣に誘われてた事を松山に聞こえるように言った。 松山は、驚いた表情を浮かべていた。まさか、みんなのマドンナ的存在の結衣が、カズを誘ったことが。おまけに洋二の事をふった後に、カズを誘うなんて。松山には、理由がわからなかった。 それに、AかBどっちにするかを悩んでいるカズが気になってしょうがなかった。変な想像をしてしまう松山であった。 カズは、少し松山に意地悪をしようと思っていた。松山はいつも、カズと結衣の会話に聞き耳をたて、会話にはいるタイミングを計っていた。 カズは、いつでも会話に入れるように待っていたのに、松山はなかなか会話に入ってこなかった。松山に苛立ちを覚えていた。だから意地悪をしようと思いたった。カズから謝ればいいことなのかもしれないが。 松山も、カズに謝るつもりでいた。しかし、大好きな結衣と仲良く話しをしているカズを見ていると謝る気がなくなった。 松山は、2人の会話が気になってしょうがなかった。だから、カズに気付かれないようにいつも近くにいた。 カズはそんな松山が、いつも近くにいることを知っていた。 大人だろうが、子供だろうが、人を好きになる感情に大差はない。 それは、生きていくうえで、いつの間にか身につける武器の一種である。もちろん個人差もあるが。 しかし、元々は誰でも、後年に身につけたものである。身につけた武器に振り回されたり、逆に身動き出来なくなることも多い。 素直になることが、決していいとは思えない。ほとんどの人は、思っているはずだ。その反面、本当は、どんなに素直に生きられたら、こんなに良い世の中はないと思ってしまう。 人間は、相対することに憧れをもつ。これも、又人間の感情の一部だ。 果たして、子供の頃、相対するものに憧れを持っただろうか。自分の好きなものにしか興味を持たなかったはずだ。武器を持たない子供の時は、もっと何事に対してもシンプルであった。 もっと自分を信じて、単純に判断していた。
< 18 / 132 >

この作品をシェア

pagetop