偽りの仲、過去への決別
カズと松山の友情は、何の障害もなく続いていた。 松山はいつも笑っていた。いつもかどうかは、定かではないが、カズにはそう思えた。 松山の顔立ち自体、カバに似ているので、いつも笑っているみたいに見えるのかもしれなかった。 松山の家族は、とても明るく見えた。1年も松山の家に通っていると、カズは松山の家族の気分になっていた。 事実、松山の家族旅行や行事ごとにはいつも一緒にいた。 いつものことながら、松山の兄弟達にも、なつかれていた。 顔が松山にそっくりなので、カズは時間が経つにつれて、親近感が湧いていた。本当の兄弟に思えた。 松山先生は、いつ家にいても、カズに向かって何も言わなかった。 学校で会う松山先生は、いつも怖い顔をして、厳しい課題を生徒に与える先生だった。しかし家にいる先生は、厳しいことは厳しいが、よくカズや松山に人生論を話してくれた。 子供がなぜ勉強するのか、たくさん友達を作って遊ぶのか、教えてくれた。 この時ばかりは、先生は、やさしい口調で微笑みながら言ってくれた。 先生も、笑うとカバにそっくりな松山にそっくりで、カズは表情に出さずに笑った。
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