偽りの仲、過去への決別
カズの病室に入るには、鬼門のナースステーションを通らなければならず、そこにはあの婦長が待ち構えていた。 松山には良い案が浮かばなかった。 「あのおっかない鬼婦長の前を通るのは嫌だなあ。」 松山はあの婦長の冷めた表情を思い出すだけで寒気がした。 洋二は何回かカズの病院に行ったことがあった。祖父が病気で入院した時だ。 洋二には手にとるように、病院の内部がわかった。 結衣も何回か病院に行ったことがあった。結衣は幼い頃、喘息に悩まされ、病院に通っていた。 結衣も病院の内部がわかっていた。「そうだ。あの病院はベランダがあるんだ。そこから行くと誰にも会わずカズの病室に行けるはずだ。」 洋二は提案した。 主導権を握られるのは癪にさわるが、何も考えつかない松山は洋二に賛同するしかなかった。
結衣も洋二の提案がベストだと判断した。 「じゃあ今日学校が終わったら行くぞ…。」 松山が言った。しかし2人の反応は芳しくなかった。「本当に大丈夫かな。もし捕まったら……。」
結衣は不安感で一杯であった。ただでさえ今まで問題なんて起こしたことのない結衣には、ルールを破ることに抵抗があった。 もう少し時間が必要だと結衣は思っていた。確かにカズに会いたいが、ルールを破る自分が怖かった。 洋二は学校が終わると毎日習い事に通っていた。習い事をさぼるには親や祖父の目を盗んで行動しないといけない。 そのことを考えるだけで気が重くなってしまった。 松山は2人を睨みつけた。
「どうしたんだ。2人とも行かないのか。」 松山はため息をついた。 2人は返事ができなかった。何も言わないことが2人の答えであった。「いいよ。」 松山はもうこれ以上2人に追求することはなかった。 松山は今日も病院の前にいた。 松山は洋二の提案を思い出していた。「ベランダから行くんだったんだよなー。」 松山はベランダに繋がる通路を探した。しかしこの病院に不慣れな松山は見つけることができなかった。 しょうがなく松山は正面突破を計ろうと思った。
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