偽りの仲、過去への決別
しょうがなく松山は正面突破を計ろうと思った。 松山は慎重にカズのいる三階の階段を登った。 階段の脇からナースステーションの様子をうかがった。 昨日は簡単に突破できたナースステーションは今日も忙しいのか人影がなかった。
多分奥の部屋にあの鬼婦長がいるのは間違いなかった。 まさか2日続けて松山が来航するとは思っていないはずだ。 松山は急ぎ足でナースステーションの前を通過した。 チラッと奥の部屋が見え、昨日松山を見つけ出した新人看護婦が笑っているのが見えた。 この後トラブルが起きることなんか知らずに。 松山はカズの病室の前で周りの状況を確かめた。 部屋のドアを開けると誰もいなかった。松山は忍び足でカズに近づいた。 カズは昨日と一緒であった。でも顔色が昨日より良くなっているみたいだった。
松山はカズの耳元で囁き始めた。 カズに聞こえているかはわからないが、そんなこと松山にとってどうでもよかった。 一瞬でもカズの側に居たかった。松山はそれだけで満足であった。 しかし又昨日の新人看護婦が入ってきた。 松山を見て立ち止まると、険しい表情になった。「どうしてあなたがここにいるの。」 新人看護婦は動揺していた。 松山は何も言わず、眠っているカズに手を振った。 松山は自ら鬼婦長がいるナーステーションに向かった。
新人看護婦に付き添われ婦長の前に行った。婦長は椅子から立ち上がると松山の前に立った。 「またあなたなの。昨日あれだけ注意したのに。どんな考えしているのかしら。」 婦長は昨日とは違い感情的に見えた。 松山は謝らなかった。
昨日みたいに頭を下げるつもりなどなかった。 婦長は何も言わない松山に怒った。「何も言わないの。どんな理由があろうがあなたのやったことは許しません。」 松山は目をそらし無視をした。どうせいくら言い訳しても学校に通報するに決まっている。
婦長は新人看護婦に向かって言った。「あなたもしっかり見張っていないからこんなことになるのよ。」 新人看護婦を叱りつけた。新人看護婦からすると本当にいい迷惑であった。 「すいませんでした。本当に申し訳ございませんでした。」 新人看護婦はただ頭を下げるだけであった。
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