偽りの仲、過去への決別
婦長は探りを入れてきた。ここで余計な心配事をなくしておきたかった。 松山の件は病院関係者の知るところとなってしまった。 婦長は次の総婦長の椅子を狙っていた。最初のうちは松山の存在自体がありがたかった。
病院のルールを破る、松山を諭し、自分の株を上げることに専念した。 周りの病院関係者に良いアピールができると思っていた。 それだけ松山は病院関係者の間で有名人になっていた。 病院の閉鎖された環境では噂話があっという間に広がりを見せた。
いつしか、みんなの注目を浴びることとなってしまった。 婦長は最初から松山の意見を聞き、対応すべきであった。 少しでもカズの情報を与えていれば松山も毎日来なかったはずだ。
しかし婦長の失敗は学校に通報したことだ。松山は学校に通報されたことで、クラスの中で浮いた存在になった。 松山は意地になってしまった。いやここでカズの見舞いを止めることは、あの婦長に負けることに抵抗を感じた。 松山は使命感を持っていた。
カズに会って話したいことが。 婦長は松山の見舞い攻撃に、このままでは自分の立場が危うくなると思った。 何事においても病院のシステムに当てはめ、きちんとトラブルを処理することが1番のアピールポイントだと婦長は認識していた。
婦長にとって松山はいくら何を言っても言うことをきかない天敵になってしまった。 大人の論理が子供には通じないことを悟った時にはもう松山は婦長の意見など聞くことはなかった。 いくら説教しても、学校に通報しても松山は病院にやってきた。
婦長はカズが目を覚ましたのをきっかけに松山とは和解しようと思った。 カズが目覚めた限り、松山を阻止する理由が見当たらないからだ。 婦長自身に有利にことが運ぶようにカズの力が必要であった。 カズは言った。「松山はいつも来て俺に話しかけてくれたんだ。」 婦長は驚いた。なぜカズがそんなことを言うのかわからなかった。眠っているカズに松山の声がきこえるわけがない。 婦長はまだ松山をいつも病室から追い返していたことをカズに伝えていなかった。
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