先生が最初で最後だよ
神里が一瞬考え込んだ。
理奈は弁当を食べる。
「演じきってどうなるんですか?」
「知らない」
おいおい、知らないのかよ。
神里は、また弁当をモグモグと食べる。
先生は、もう2個目に手が伸びていた。
こんなに食べて、こんなに細いだなんて。
スーツで長い足を組んで、女の子の作った弁当を食べる。
この人なら、
今までに何十回も味わってきた経験なんだろうな。
人間慣れるんだろうな。
「でも俺ね、この高校に来て良かったかも。」
「どうしてですか?」
神里は理奈を見ると、
ニコニコと笑った。
「食費代が浮く。
だってさ、ここの生徒さんたちは、この貧乏な先生にご飯を恵んでくれるんだから。」
「へっ?」