勝利の女神になりたいのッ!~第2部~


慶長3年8月18日(1598年)


太閤 秀吉の死


全てはこの日から始まった。


豊臣政権が破滅に向かう日。



「秀頼を…お頼み申す」

最後まで息子、秀頼を心配しながら静かに息を引き取った秀吉。


「秀吉様!!」


「殿!!」


「殿下!!」



涙を流す者。


その中でも冷静に対処する人の姿が見える。


あれは…


「殿下が身罷られたことは公表してはならぬ」


涙を堪え、肩を震わせながら指示を出す人。


ああ、やっぱり…


私のよく知る


私の大好きだった




お兄ちゃん――。



こんな時でも、そんな風に感情を押し殺して自分の責務を果たそうとしていたのね。


あれは私が変えたいと願う前のお兄ちゃんなの?

それとも、紫衣と出逢ってからのお兄ちゃんなの?


どうか―


どうか……―。


その悲しみを一緒に背負うことが出来る紫衣と出逢った後のお兄ちゃんであって欲しい。


その震える肩にそっと触れて、悲しみを癒やしてくれる紫衣と出逢った後であって欲しい。




紫衣――


お姉ちゃん――


どうか、お兄ちゃんの力になって――




お兄ちゃんを守ってあげて――



どうか、どうか――。





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