比丘尼の残夢【完】
そうですか。

私のためでしたか。


「うぅ... 」

「泣かなくても... ちょっとお仕置きが過ぎたな、すまん」

いえ、病気の貴方に看病してやるなんて言われて、嬉しいだけなんです。


でもすみません。

心臓が喉に詰まってしまったみたいで、声がでません。


「おい、何してる?まだか」

待ちくたびれたらしい、医者の大声がした。

すぐに行く! と返して、ご主人様は頭を掻いて立ち上がり、ぶつぶつ言いながら出ていった。


「あいつ俺より先に触りやがったな、どうしてくれようか」
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