比丘尼の残夢【完】

※scene8『優しさにこんな仇』

美味しかった!

昼御飯の、凝ったソースの白身魚は冷たくなっていたけど、平気。

朝食べそびれたデザートの果物、あれはなんて食べ物だったのだろう。

食べられなくて、口惜しい。

また、でますように。


使い慣れてきたナイフとフォークを動かしていたら、バタバタと廊下で音がした。

医者が帰るのだろうか、お見送りに出なくては。

慌ててお茶と一緒に魚を飲み込むと、今度は怒鳴り声がした。


「二度とお前なんぞ診てやるか!!
死ね! くたばれ! 朽ち果てろ、阿呆が!」

なんて罵詈雑言。

あの冷静な医者の言葉とは思えない。

耳を塞ぐ間もなく、玄関が乱暴に閉まった。


「...... 」

どうしてくれようか、とは言っていた。

あれほど怒るとは。
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