比丘尼の残夢【完】
こんな遊んでいる時間などないのに...... 。

「はぁ、... 相変わらず面白いな、お前さんは」

指先からご主人様の笑いを堪えるような震えが伝わってきて、もうなんだか何をしたかったのだかわからなくなりました。


「すみません! すみません!!」

「いや、これは独り言なんだけど、... 
実は抱いてくれと言われたところで、出来るかわからないんだよ。恥ずかしながら」

そうですか、でもそれは知っています。


口付けは手の甲に移り、返して手首、肘まで来た。

よいしょと私の体を起して仰向けに寝かせ、寝巻の合わせを解きながらご主人様は独り言を続けた。


「無理して腹上死しても笑わないでね。
...ん? でもそれもなんか俺らしいというか、医者は笑いそうだけれど」

「...... うわ」

肩から、首筋はだいぶ念入りだ。

生温かい舌の感触にゾクリと体が震えた。
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