Painful Love※修正完了※
「―――時雨」
ハァハァと、駆け上がって来た為乱れた息を整えながらも呼ばれたわたしの名前。
数年振りに聞いた、わたしを呼ぶその声に、涙が出そうになった。
グッと我慢するために、震えているのを悟られない為に目を閉じて拳を握る。
どうしよう。
何も浮かんでこない。
浅くなる呼吸、早まる心臓を落ち着かせようと、深呼吸をした瞬間―――。
ふわっと空気が動いてわたしの体は前のめりに。
でも倒れる事なく目の前にいた彼の体と密着して。
体に絡み付く彼の腕。
押しつけられるように耳に当たった彼の心臓からはまだ整っていない鼓動が早く脈打っているのが聞こえる。
何より、あの頃と変わらない爽やかなクールマリンの香りがわたしの胸を締め付けた。
「拓……斗」
彼の名前を呼ぶ。
この3年間、忘れる事なく心の中で呼んでいた。
口に出すことはせずに。