アクアマリンの秘密
【華央side】

こうやって…消えていくのね、私は。
そう思いながら薬指を見つめた。

指先はもうとっくに雪に戻っていた。
薬指がすでになくなり、そこからゆっくりと私の体が雪に溶けていく。
…正直に言うと、こうして雪になっていく体が自分が人間ではないことを示していて、それが妙に悲しかった。
人間として、死ぬことさえ許されない自分が虚しくもあった。


でも…こんなことを思っていられるほど…時間は残っていない。
このペースじゃ…そんなに長くはもたないわ。


「紫紀。」


私はかろうじて動く右手で、紫紀の頬に触れる。
そしてその紫の目を見つめた。

『…あなたの唇を忘れたくないの。』

心の中でそう呟いて、私は背伸びをして、自分の唇を紫紀の唇に重ねた。


唇を離したその時には、もう私の腕は雪となっていた。
言わなくちゃ…この口が雪になる前に。


「この体が消えてしまっても…心は残るから…。
有坂華央の人生において…あなたと出会えたことが…あなたを愛し、あなたに愛されたことが…一番の誇りよ。
…あなたのことを…ずっと愛してるわ。紫紀。」


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