アクアマリンの秘密
愛を知らぬ者が愛を与えてくれるはずがない。
そんなこと、分かりきっていた。

なのに私は…



「…分かりました。あなたに忠誠を誓います。」

「話し方まで変える必要はない。」

「いえ…。これが礼儀というものでしょうから。」

「…お前は賢いな。」



そう言って私の頭を撫でる男。

今にして思えば、その行為でさえ仮初だった。
だけど私は…
この腕の温かさを離したくない、そう思ってしまっていた。
そう思えるほどに腕の中は居心地が良かった。
思えば…服を着たままの私をこうして抱きしめてくれた存在は初めてだった。






「私の名はイアルだ。
お前の名は?」

「…ございません。
好きにお呼びください。」

「…ならば…セリユ、と名付けよう。」



この日…
我が故郷、ルクスインが崩壊したその日。
私はルクスインを崩壊させた男の手を取った。

愛を得るために、この人に一生付き従うことを決めた。


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