アクアマリンの秘密
「哀しいだけなら…終わらせる…か…。」


私は剣を強く握り直した。


もう…1秒前には戻れない。
それに戻りたいとも思わない。

私の時間は…終わるはずだったのに、延長された。
ならば生きることが義務になる。



哀しいだけの時間は終わった。

姫が前を向いて生きるというのならば、私はその姿が見たい。
私を『瑠香』と呼び、私を優しく抱き締め、私だけではなく全ての者に癒しを与える、愛に満ちた安らぎの姫君。

哀しみの中にいた私を見つけてくれた、心優しき姫君をここで死なすわけにはいかない。




「光が見えてくるような気がする…。」




闇ばかりが私を支配していたあの時とは違う。
愛に飢え、仮初の愛を本物の愛だと信じていた…かつての私とも違う。





「終わらせる。
哀しいだけの過去も未来も。」






私は剣を大きく振りかぶった。



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