恋色の紙ヒコーキ
「危ないっ…!!」




気がつくと陽…いや、ジョシュア皇子の腕の中にいた。


「皇子!!」


ここで『陽!!』って言わなかったあたし、すごく偉いと思う。
ってそんなことはどうでもよくて…
目の前には陽の顔のドアップ。
あたしの顔は反射的に赤くなる。


「申し訳ありませんっ!!」

あたしは陽のそばを離れようとするけど、陽はしっかりとあたしを抱き留めたまま、腕の力を弱めようとはしてくれない。


「ジョシュア…様…?」


もーっ!!あたしが転んだのも台本にないことなのに…
アドリブとかあたし出来ないよっ…


「このまま君を離したくない…」

「え?」

「「「きゃーっ!!!!!!」」」


凄まじい声だったけど、あたしにはそっちを見る余裕なんて少しもなかった。
だって目の前の陽から目を離せないんだもん…。


「ジョシュア…様…」

「……なんて言ったら君を困らせることになるというのは、僕もよく分かっているよ。」

「あ…あのっ…」



顔が素の陽に戻ってる。
ってかそんな台詞なかったじゃん!!



「それでも君を離したくないんだ。
ずっと…俺だけを見ていてほしい…。」

「っ…。」


ダメダメダメーっ!!
ジョシュアは『俺』とか言わないし!!
完全に目の前にいるのは『陽』になってる!!



あたしが慌てふためいていると、ステージの照明が落ちた。


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