地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ
そう考えると、なんだか泣きたくなっちゃって……。

溢れてきそうな涙を必死に留めようとする。


上を向いて、我慢しようとした瞬間───……。




「ったく無防備すぎ……アイツには秘密だぞ」

「えっ……」



“会長?”と言おうとしたのに、続きは言えなくて。


いきなり手首を掴まれて、体を引き寄せられる。

目の前には、あたしと同じ黒髪があった。

病室で目覚めた日以来の温もりが、唇に。

会長にキスされていた。


触れたのは、一瞬……だけど、あたしには長く感じた。


「……じゃあな」

離れると、また頭を撫でられて……生徒会室を出て行く。


今のキスは、たぶん……会長が諦めるためのものだ。

「陸には……秘密だな」

会長の気持ちを考えたら、怒ることは出来ない。

胸にしまっておこう……。


そう決めて、あたしも生徒会室をあとにした。
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