ADULT CHILDREN
戻ってきたけんちゃんは私と歌い終えた紗枝に顔の前で手を合わせ渋い顔をした。


「ごめん会社戻んなきゃ」


「えー!また?」


紗枝は不満げに眉間にシワを寄せ頬を膨らませる。


「ごめん!ほんとごめん!」


「もうわかった!じゃぁ行こ!」


紗枝に言われるまま私も部屋を出ようとすると、けんちゃんが私に申し訳なさそうに謝ってきた。


「本当にごめんね」


けんちゃんを仕事中に呼び出したのは私達の方なのに、何度も謝るけんちゃんになんだか申し訳なくなって

「こちらこそすみません」と軽く頭を下げた。



車に乗りまた待ち合わせ場所と同じ場所に送ってもらう。


今日は中止か―――――


そう思っていた。

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