ADULT CHILDREN
夏休み中にある特別な日と言えば私の誕生日。


誕生日は父がケーキを買ってきてくれた。

家族らしい家族だったのはその時くらいだ。


それも、ろうそくの火を吹き消すと点された炎と同じように一瞬で終わる。

母は毎年誕生日が来る度にこう言った。


「産んであげたんだからあんたが私にお礼を言うべきよ。どうして私が祝わないといけないの。本当は私がプレゼント貰うべきなのよ?誕生日は親が感謝される日なの。産んでくれてありがとうって。あんたはそんな一言も言えない訳?」


誕生日でも母に気をつかう事を忘れてはならない。


そう言われてきたからか。


プレゼントはいらないと言った事があった。


父と私と弟。一緒にデパートに私の誕生日プレゼントを買いに行った時の事だ。


父が財布の中を気にしている姿を見て私は笑顔を作る。


「私、何もいらない。欲しいものないから」


そんな事は嘘に決まっている。
本当は欲しい物があった。

だけど言えなかった。

いい子にならないと嫌われてしまう。

その言葉の裏に隠された想いに気づく事なく父は喜んだ。


それでも
父が笑ってくれるなら

それでいいと思った。



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