流れ橋
「嬉しい。お姉さんに誉められるなんて。わたし、浴衣着てよかった。」鏡の中のお姉さんがニッコっとした。わたしも、笑った。

日頃、制服かジャージを着回しているせいか、浴衣を着ると、とても新鮮な気持ちになった。

今日だけは、別人になれそうな予感がする。
それから、髪の毛をひとつにまとめ上げ、大きな髪どめで結い上げた。

朋子は、鏡の前で丁寧に体の隅々まで、見直していた。

「貴方たち、そのくらいでいいんじゃないの。」いつまでたっても、鏡の前から離れないわたし達をおばさんは、たしなめた。

だけど、顔は笑っている。おばさんも浴衣に着替えながら「いいわね。浴衣を着るのって。こんな時、女性に生まれてよかったって思うわ。」と嬉しそうに話した。

こんな時間は、本当に楽しい。ずっとこんなふうに、鏡の前で、ああでもない、こうでもないと話し続けていたかった。だけど、今日のメインは、花火を見ることだ。
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