流れ橋
彼に本当のことを話して、助けを求めたい気持ちと、今までまともに話をしたこともない彼に、父親のことを話すのは、荷が重い気持ちになった。

どうしよう。彼とわたしは、目を合わせたまま、何秒か過ぎる。

「ここは、暑い。急いで、送ってあげるよ。有川の自転車は、後で、僕が持ってきてやるよ。」そういって、自転車まで歩いていく。
わたしは、彼の背中に「そんな、悪いよ。」と力なく声をかけた。
彼は、自分の自転車を持ってくると、「気にするなって。その変わり、花火大会の時は、よろしくな。」そういって、やさしく笑った。
わたしは、また涙がこぼれそうになった。

彼の優しい気持ちに感謝していた。

田中俊は、わたしがまた、泣き出したものだから慌てて、自転車を下りて駆け寄ろうとしたが、わたしがそれをとめた。

「田中くん、ありがとう。花火大会の時、なんかおごってあげるよ。」わたしは、彼の自転車の後ろに乗った。
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