流れ橋
自転車は、かなりのスピードを出して走った。
田中俊の家は、駅近くにあるのでわたしの家とは、反対方向にあった。

段々と周りの景色は、緑一色になっていく。
彼は、近道をするつもりみたいだ。すぐそばの国道を通らず、狭い小道に入っていった。
見渡す限り、水田が広がっている。そのあぜ道を自転車が通っていく。

遠くの方では、真っ白い入道雲が横広くなって流れていくのが見える。今日の青空に、とても映えて美しい景色だった。

夏の景色そのものだな。風も気持ちが良くふいている。

自転車に乗っているのが心地よかった。ただ、この心の不安感さえなければ・・。

田中俊は、一生懸命自転車をこいでくれている。わたしは、彼をじっと見つめて観察した。

肌が日焼けしている。背も高く、全身が筋肉でしまっている。顔は、 まるで、女性のように端正な顔立ちをしていた。

確かにカッコイイ。モテるはずだなと思った。
< 63 / 201 >

この作品をシェア

pagetop